TransAM® NF-κB 転写活性|比色定量キット

p50, p52, p65, c-Rel,およびRelBの活性を迅速かつ簡便に測定

 

TransAM NF-κBファミリーキットの概要

TransAM NFκB p50 / p52 KitsTransAM NFκB p50 / p52 Kits
TransAM® NFκB p65 KitTransAM NFκB p65 Kit
Stripwell Plate
     
 

NF-κBの導入と背景

Nuclear Factor κB (NF-κB) は、重要な転写因子複合体です。これらは、免疫応答や炎症、発達、細胞増殖やアポトーシスを調節する経路にかかわり、細胞内で起こる多くの遺伝子発現調節において重要な役割を果たします。NF-κBが異常をきたすと、いろいろなタイプの「がん」や、神経変性疾患、心臓病、炎症といった様々な病気につながります。これらの疾患は通常、過剰に活性化したNF-κB複合体によるものであり、サンプル中の活性を迅速、正確かつ確実に測定できることの重要性が注目されています。

TransAM DNA結合ELISAを用いたNF-κB活性の測定

TransAM NF-κBキットは、ポジティブコントロール抽出物の他、NF- κB活性を調べるために必要な構成品一式を含んだDNA結合ELISAキット群です。これらのキットは、複数のNF-κBファミリーサブユニット(p50、p52、p65、c-Rel、およびRelB)または個別のNF-κBサブユニットp50、p52、またはp65のいずれかを定量的に解析するために利用可能です。
 
TransAM NF-κB転写因子ELISAキットをご利用時に、オプションのタンパク質標準品として利用可能なp50およびp65のリコンビナントタンパク質も別途ご用意しています。
 
Flow chart of the TransAM DNA-binding transcription factor ELISA

図1: 核抽出物に含まれる活性化された転写因子が、 96 strip wellプレートに固定されたオリゴヌクレオチドと結合する。一次抗体、二次抗体および発色試薬を順次反応させ、活性化された転写因子を比色定量する。

 

TransAM NF-κB Family Kitの内容

キットの構成品: NF-κB 96 strip wellプレート(1、2、または5枚)、各NF-κBサブユニット(p50、p52またはp65)に対する一次抗体、または、p50、052、p65、c-RelおよびRelBに対する一次抗体セット(TransAM® NFκB Familyキット)、HRP標識二次抗体、野生型および変異型NF-κBのコンセンサス配列を含むオリゴDNA、ポジティブコントロール細胞抽出物、DTT、プロテアーゼ阻害剤カクテル、ニシン精子DNA、Lysis Buffer、Binding Buffer、10X Washing Buffer、10X Antibody Binding Buffer、Developing Solution、Stop Solution

注意:TrasnsAM® NF-κB Family Kit (Cat. No. 43296)はNF-κB の各サブユニット p50、p52、p65、c-RelおよびRelBの解析を行うための各抗体を含みます。p50およびp52の抗体は、ヒトおよびマウスのサンプルに使用可能ですが、p65およびRelBの抗体はヒト、マウスに加え、ラットのサンプルにも使用できます。ただし、c-Relの抗体はヒトのサンプルにのみ使用可能です。

キットの保存条件: キットに含まれる試薬等は室温から-80℃まで複数の温度条件で保管する必要がありますので詳細はマニュアルをご参照ください。キットの構成品は適切に保管された場合、6か月間保証します。

Technology covered under EAT-filed patents and licensed to Active Motif. Use of TransAM in NFκB-related drug discovery may be covered under U.S. Patent No. 6,150,090 and require a license from Ariad Pharmaceuticals (Cambridge, MA, USA).

 

TransAM NF-κB Family Kitのデータ

TransAM NF-κBアッセイはゲルシフトアッセイよりも高感度

TransAM NFkB data vs. gel shift

図2: TransAM NF-κBアッセイはゲルシフトアッセイよりも高感度です。ヒト繊維芽細胞WI-38を用いて、IL-1αによる30分間刺激の有無でNF-κBの活性化を比較した。全細胞抽出物の量を増やしたときのTransAMキットの結果(A)と、ゲルシフトアッセイの結果(B)を示す。TransAMでは、IL-1 α非刺激時のサンプルにおいてもサンプル濃度依存的なシグナルが検出されたの対し、ゲルシフトアッセイではIL-1 α刺激時の高濃度のサンプル(5 μg/well以上)においてのみシグナルが検出された。


 

複数の細胞株を用いたNF-κBファミリーキットの反応特性

NFkB family profiling of DNA binding activation in various cell lines

図3: TrasnsAM NF-kB ファミリーキットを用いて、 p65, p50, c-Rel, p52およびRelBの活性化を調べた。それぞれ未処理のHeLa細胞、TNF-α処理したHeLa細胞、未処理のJurkat細胞、TPA (PMA)+カルシウムイオノフォア(CI)処理したJurkat細胞、およびRaji細胞から核抽出物を調製し、各ウェルに10 μgを加えてアッセイを実施した。

 

TransAM NF-kB Family Kit FAQs

TransAMはどんな生物種のサンプルに対応可能ですか?

すべてのTransAMキットは、ヒトサンプルで利用可能です。いくつかの製品は、マウスやラットにも反応します。各TransAMキットのマニュアルには、交差性についての情報をご案内しています。各マニュアルの“Kit Performance and Benefits”をご確認ください。

TransAMキットの呈色反応の推奨時間は?

推奨時間は、テクニカルデータシート(TDS)にそれぞれ記載しております。しかしながら、この時間はあくまで参考時間です。使用するサンプル、また温度などによっても異なりますので、各ウェルの色を観察しながら反応時間をご検討ください。TransAMキットのカラーチャートを参考にしてみてください。

TransAM Color Chart

1ウェルあたりの最小サンプル量(抽出物、細胞数)は、どれくらいですか?

それぞれのTransAMキットは、それぞれ検出限界が異なりますので、製品マニュアルをご確認ください。例えば、TransAM NF-κBキットの検出限界は、核抽出物で0.5 µgとなります。Nuclear Extract Kit(商品コード#40010)を使うと、100万細胞からおよそ20 µgの核抽出物が得られますので、0.5 µgであればおよそ25,000細胞分に相当します。

1ウェルあたり、どれくらいのライセートを使えばよいでしょうか?

最適なタンパク質濃度は、経験的に決める必要があります。最初に5 µg, 10 µg, 20 µgと核抽出物や細胞抽出物の量を変えてみて最適な量を検討してみてください。処理、未処理のサンプルなど、どちらも検量線が直線の範囲内になるような量にすることが重要です。発色の基準としてカラーチャートを参照ください。

1ウェルあたりのサンプル量を増やすことはできますか?

はい、可能です。サンプル量を増やして反応スケールを変更することができますが、その際にサンプルに対してComplete Binding BufferとComplete Lysis Bufferの比率は維持するようにしてください。サンプル量を増やした場合、96反応分の量に足りなくなることがありますので、Total volumeは、100 µl(サンプル+Complete Binding Buffer + Complete Lysis Buffer)以下にしてください。

なぜOD450nm と OD655nmの2波長の吸光度を測定する必要があるのですか?

リファレンス波長(OD655nm)は、測定物質に依存しない吸光度を測定することで、補正するためのものです。通常は、サンプル間での差はなく一定になります。しかし、測定機器の感度がウェル間でばらつくことなどから多少の差が生じます。そのため各ウェル毎に測定波長OD450nm から OD655nm を引いた値を使うことをおすすめします。多くの吸光光度計で自動的に計算することが可能です。

なぜDuplicateで測定する必要があるのですか?

実験手技のばらつきがあるため、少なくともDuplicateでの測定を推奨しています。ばらつきが大きい場合には、さらにtriplicate (n=3)での測定を推奨します。プロットしてばらつき(標準誤差)を確認してみてください。

検量線(スタンダードカーブ)は必要ですか?

検量線は、サンプルの中の標的因子の濃度を測定するために必要です。しかしながら、正確な濃度を求めることが必ずしも必要ではありません。実際に測定サンプルと比較サンプルの差を比べるだけで十分な情報が得られることもあります。検量線を作成するもう一つの理由は、サンプルのタンパク質濃度と標的因子の濃度の関係を求めたり、サンプルが検量線の範囲内で測定できているか確認したりするためです。TransAMキットでは、2.0 OD450までの範囲で使用すれば、マイクロプレートリーダーが測定可能な直線の範囲となるように設定されています。

どのようにして検量線が良いのか判断できますか?

線形回帰直線(linear regression line)の R²の値が0.94より高いことが期待されます。この値は、より多くの重複アッセイをすることや、正確にピペット操作をすることで改善されます。

TransAM キットには、比色法(colorimetric)と化学発光法(chemiluminescent)のキットがありますが、両者の違いはなんですか?

一般的には、化学発光法のELISAの方がより高感度で、ダイナミックレンジも広いです。

TransAM family kits(商品コード#43296) と個別のTransAM キットの違いは?

TransAM family Kitは、2枚の96ウェルプレートと抗体を含み、いくつかの転写因子ファミリーの測定が可能です。添付されている抗体は、96ウェル1枚分の量があるので、2つ、もしくはそれ以上の抗体を組み合わせて柔軟に測定数を決めることが可能です。一方、通常のTransAMキットは、1枚の96ウェルプレート、96ウェル分の抗体を含んでいるキットです。

TransAM NF-κB Flexiキットとはどのようなものですか?

すべてのNF-κBサイトが同じ配列ではありません。そのためFlexiキットでは、カスタムオリゴDNAを合成して、プレートに結合していいただくことができます。これにより、特定の配列に対するNF-κBダイマーのDNA結合活性の測定が可能です。

どのようにして核抽出物を調製すれば良いですか?

以下の方法で調製してください。

  • アクティブ・モティフ社のNuclear Extract Kit(商品コード#40010/#40410)を使用する**
  • TransAMキットのマニュアルに記載している、Nuclear Extractのプロトコルに従って調製する
  • 研究者の核抽出プロトコルで調製する。ただし、SDSは含まないようにものを使うこと。また核ペレットは、最終的にComplete Lysis Bufferに懸濁すること。

**TransAMキットにはLysis Buffer AM1が含まれているものと、Lysis Buffer AM2が含まれているキットがあります。 Lysis Buffer AM1を含むTransAMキットを使用する場合は、記載されているとおりにNuclear Extract Kitをそのまま使用可能です。 Lysis Buffer AM2を含むTransAMキットを使用する場合は、Nuclear Extract Kitに含まれるLysis Buffer AM1ではなく、TransAMキットの構成品であるLysis Buffer AM2を使用してください。 もしNuclear Extract KitのLysis Buffer AM1を使用してサンプルをすでに調製している場合は、TransAMキットに付属のLysis Buffer AM2でこれを1:3に希釈することをお勧めします。

TransAM キットのマニュアルには、培養細胞から核抽出物を調製する方法について説明がありますか?また組織からの調製法についてプロトコルはありますか?

アクティブ・モティフで販売しているNuclear Extract Kit(Cat #40010/#40410)をご利用ください。組織、細胞からの核抽出物の調製に必要な試薬とプロトコルが提供されます。キットを用いなくても、TransAM キットで紹介しているComplete Lysis Bufferを調製して、組織から核抽出物を調製することは可能です。細胞溶解のためにSDSを使うことは避けてください。

細胞を溶解する際に、どのように顕微鏡で観察できれば良いですか?

位相差顕微鏡の観察では、破砕されていない細胞は、核のある中心部が黒く、周りの細胞質部分が明るくハロのように観察されます。一方、溶解されると、核は小さくドット状に観察され、周りに非対称に夾雑物が結合しているように観察されます。例を示します。

Cell lysis

図:位相差顕微鏡で、Jurkat細胞を溶解前(A)と溶解後(B)に観察した例;Ziwei Wang, Tsinghua Universityより許諾を頂いて掲載

末梢血単核細胞(PBMC:peripheral blood mononuclear cells)からの核抽出物を調製する推奨する方法はありますか?

PBMCは、Hypotonic Bufferでの溶解に耐性があり、溶解するのが難しいサンプルです。位相差顕微鏡を用いて、細胞の溶解状態を確認することが必要です。もし適切に溶解されていないようであれば、ダウンス型ホモジナイザーのクリアランス(隙間)の小さいペッスル(0.025-0.076 mm)を用いてホモジナイズするか、28-30 ゲージの注射針を用いて液を出し入れしてせん断溶解してみてください。アクティブ・モティフで販売しているDounce Homogenizers は、1 mL タイプ (商品コード#40401) と 15 mL タイプ (商品コード#40415) のどちらも、このクリアランスに対応するペッスルが付属しております。

初代培養細胞からの核抽出物を調製する推奨する方法はありますか?

初代培養細胞からの調製は、プレートから剥がすなどのスクレーピングなどにより細胞が簡単に破砕されるため、難しいです。顕微鏡を用いて細胞の溶解状態を確認しながら最大収量が得られるように調整してみてください。

核サンプルを調製するにあたり、どのようなホモジナイザーを利用すれば良いですか?

細胞の溶解、核の調製には、ペッスルのクリアランス(隙間)が小さい(0.025–0.076 mm)ダウンス型ホモジナイザーの利用をおすすめします。組織サンプルでは、細胞の溶解、核の調製用に、よりクリアランス(隙間)の大きい(0.089–0.14 mm)ダウンス型ホモジナイザーを推奨します。アクティブ・モティフで販売しているDounce Homogenizers は、1 mL タイプ (商品コード#40401) と 15 mL タイプ (商品コード#40415) のどちらも、両方のクリアランスに対応するペッスルが付属しております。

Clearance pestle

核抽出液は、何回くらい凍結融解できますか?

理想としては、凍結融解を避けるために、核抽出物は必要量に応じて分注してください。もし融解後に再凍結する必要があるのであれば、多くても2回までにしてください。複数回の凍結融解は、サンプル中のタンパク質の分解、活性低下を引き起こします。融解する際には、氷上でピペッティングにより混ぜて使用ください。ボルテックスによる激しい撹拌は、おすすめしません。

核抽出液を用意するのに、凍結サンプルを使用可能ですか?

新鮮な細胞、組織からスタートすることを推奨いたします。サンプルを凍結する際に、細胞質、核の構成物が破砕されるため、きれいな核フラクションを取得するのが難しくなるためです。しかしながら、もし凍結する必要があるのであれば、-80℃で瞬間凍結するか、細胞であれば-80℃まで緩慢凍結法で凍結してみてください。

核抽出液を準備していますが、核のペレットに粘性があって、Complete Lysis Bufferで懸濁できません。どのようにしてサンプルを調製すれば良いですか?

溶解性を高めるために

  • 穴を大きくしたピペットを使って、液体を出し入れしてみてください。
  • ダウンス型のホモジナイザーを利用してみてください。
  • 高速で10秒間ボルテックス撹拌をしてみてください。
  • ロッキングプラットフォームなどを使って、30分インキュベーションしてみてください。

もし必要であれば、さらに5-10 µlのComplete Lysis Bufferを加えてください。ただし、希釈しすぎには注意してください。特定の細胞種では、粘性のある核ペレットになることもあります。粘性が完全に消失しなくても、良好なタンパク質収量が得られている場合があることに注意してください。溶解が困難でも決して界面活性剤を加えないでください。

全細胞抽出物は測定できますか?

サンプルに依存します。全細胞抽出物では、測定したい転写因子が核抽出物よりも希釈されてしまいます。そのため、より多くのタンパク質量を(2倍、もしくはそれ以上)が必要となります。さらに転写因子が細胞質と核の移行によって制御されている場合、全細胞抽出液は、転写因子の活性測定に影響を与えることになりますので、注意が必要です。

細胞質抽出サンプル(Cytoplasmic extracts)にも使用可能ですか?

いくつかの理由からおすすめできません。TransAM キットはおもに核内で起こるタンパク質とDNAの結合を測定するために開発されました。細胞質のサンプルを利用した場合、生理的なものではないと推察されます。また細胞質画分は、通常核抽出画分より希釈されていたり、核抽出画分と違って界面活性剤を含んでいたりするので、アッセイに適していません。

どのようにして核抽出物の量を定量したら良いでしょうか?

Bradford法で測定することを推奨します。BCA法では、測定阻害物質の影響を排除するために、より希釈が必要な場合があります。Nuclear Extract Kit (商品コード# 40010/#40410) を利用頂く場合、水で50倍希釈して測定してください。BSAを使った標準曲線の作成方法など、詳細な測定方法については、Nuclear Extract Kit のマニュアルをご参照ください。

どれくらいの細胞や組織を使って核抽出物を取得すれば良いですか?

8.8x106 個の細胞もしくは45 mg の組織サンプルからスタートすると良いでしょう。組織の細胞数がわからない場合には、 一般的な2x105 cells/mgで見積もることも可能です。

8.8 x 106 個の細胞から、どれくらいのタンパク質が得られますか?

細胞や組織の種類に依存しますが、一般的には約3-5 mg/mlの濃度で、150-250 µgの量が得られます。

TransAMアッセイで測定を阻害する物質はありますか?

SDSや、アジ化ナトリウム(Sodium Azide)がCell Lysis Bufferに混入すると、抗体との結合を阻害し測定に影響を与えます。

 

TransAM NF-κB ファミリーのキットが使用された論文

TransAM NF-κB Family (Cat. No. 43296)

 
 
 

TransAM NF-κB p50 (Cat. No. 41096)

 
 
 

TransAM NF-κB p65 (Cat. No. 40096)

 
 
 


 

TransAM NF-κB Family Kitの資料

 

日本語の安全性データシートはこちら


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Name Format Cat No. Price  
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