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リコンビナントヒト型COVID-19抗体の開発と特性評価

Covid-19 Antibodies
 

By Kevin Bryant, Ph.D.

June 3, 2020

COVID-19は、公衆衛生上、近年最大の問題となっており、地球上に生活するほぼ全ての人々の生活を一変させました。アクティブ・モティフを含む多くのバイオテクノロジーおよび製薬会社は、新型コロナウイルスによる感染症の大流行が中国で始まって以来、感染症の検査と治療のための新しいツールの開発に24時間体制で取り組んでいます。

アクティブ・モティフは2月に、復旦大学の上海医学院および上海公衆衛生臨床センターとの共同研究により、COVID-19の回復者からB細胞を単離し、世界で初めて抗SARS-CoV-2抗体遺伝子をクローニング、ヒト型リコンビナント抗体として発現、特性評価をしたことを発表していました。

当社独自のAbEpic™プラットフォームを用いて作製したこれらのリコンビナントヒト型COVID-19抗体は現在、研究団体において購入可能です。また、弊社はこれらのリコンビナント抗体を用いた診断および治療法の開発を継続するためのパートナー企業または協力者を探しています。

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COVID-19とは何か?

COVID-19は、CoronaVIrus Disease 2019の略で、新型コロナウイルスSARS-CoV-2の感染を原因とする呼吸器疾患の正式名称です。

COVID-19のアウトブレイクは中国湖北省にある武漢で始まり、現在では世界中ほぼすべての国において症例が確認されています。COVID-19は2020年3月11日に世界的大流行として公式に宣言されました。

COVID-19の一般的な症状には発熱、倦怠感、空咳などがあります。COVID-19の患者は息切れ、体中の節々や喉の痛みを訴えることもあり、稀に下痢や吐き気などの症状も見られます。

なぜ新型コロナウイルスの研究が重要なのか?

COVID-19の原因ウイルスは、2003年に重症急性呼吸器症候群(SARS)のアウトブレイクを引き起こしたウイルスと遺伝的には類似しているものの、異なるコロナウイルスであることから、SARS-CoV-2と命名されました。

このウイルスがどの様に複製し、病気を引き起こすかについて詳細を研究することで、研究者や医師はより迅速かつ正確な検出法を開発し、治療法やワクチンを展開することが可能となります。

例えば、ウイルスのライフサイクルの重要な側面を研究することにより、研究者が最適な薬剤標的を特定のに役立ち、場合によっては、医師がSARS-CoV-2感染症の治療において、他の関連ウイルスに対する有効な治療法を利用できる可能性があります。

抗体はCOVID-19の診断や治療にどのように役立つか?

多くのウイルスと同様、COVID-19のウイルスは細胞に取り付き、ウイルス粒子上のスパイクタンパク質と細胞表面の受容体タンパク質の相互作用により感染します。

スパイクタンパク質はウイルス粒子上にあるため、スパイクタンパク質に非常に特異的にかつ高親和性で結合する抗体は、生物学的試料に含まれるウイルスの存在を検出するELISAのような免疫学的アッセイに使用することが可能です。

さらに、患者の持つスパイクタンパク質に特異的な抗体を検出することは、患者が以前に新型コロナウイルスに感染し、免疫応答によって回復したかどうかを決定する方法の一つです。

最近、ドイツ、オーストリアおよびロシアの研究チームは、科学誌CellSARS-CoV-2の受容体はACE2と呼ばれるタンパク質であると結論づけ発表しました。

スパイクタンパク質に結合してACE2との相互作用を妨げる抗体はウイルスを『中和』することが可能です。これにより、ウイルスはそれ以上の細胞に感染できなくして、病気の進行が治まり快方へ向かいます。多くの患者では、適応免疫応答(抗原特異的な免疫応答)がスパイクタンパク質に対する抗体を産生して、ウイルスの拡散を制御し疾患の重症化を防ぎます。しかし、高齢者や心疾患、喘息または他の慢性呼吸器疾患、あるいはがんのような特定の既往歴を有する患者では、薬物療法なしではより重篤な症状を呈する可能性が高いと考えられています。

この抗体を介したウイルス中和のプロセスは、スパイクタンパク質に対する抗体を治療として患者に投与するような「受動免疫」によっても起こすことが可能です。受動免疫療法は、ウイルス感染に対し効率的に免疫反応の起こった患者の血液から血清を採取することにより行うことができます。しかしながら、この方法では潜在的に多くの合併症が生じる可能性があり、治療を待つ患者をさらなるウイルスなどに曝露させる可能性があります。このため、より安全で優れた方法とするには、高度に特徴づけされた抗体を精製して用いることが必要です。

リコンビナントCOVID-19抗体の開発

アクティブ・モティフは、研究用抗体の開発・販売しているリーディングカンパニーであり、長年にわたる研究用抗体製造において、リコンビナント抗体を生産するために多くの革新的な技術を開発し進歩させてきました。

中国における新型コロナウイルスのアウトブレイクがニュースになった後、アクティブ・モティフ上海支社の研究者は直ちに復旦大学の上海医学院および上海公衆衛生臨床センターとの共同研究開始しました。これはCOVID-19患者からB細胞を単離し、遺伝子をクローニング、抗体を発現させて精製し、抗体を評価するためです。

アクティブ・モティフと提携団体は、初期の流行地に近いオフィスや研究所を持っていたことに加え、単一細胞抗体スクリーニングとリコンビナント抗体作製のための適切なテクノロジーを持つことからこの公衆衛生上の機器に迅速に対応し、リコンビナントヒトCOVID-19抗体を生産する世界で最初のグループとなりました。

詳細に関するお問い合わせはこちら

リコンビナント抗体産生のためのAbEpic™アプローチ

AbEpicは、抗原特異的なB細胞の同定および、それらの細胞が発現する重鎖・軽鎖の抗体遺伝子を高効率にクローニングする手法を組み合わせたActive Motifにより開発された独自のプラットフォームです。これにより、標的特異性の高い完全リコンビナント抗体が産生できます。

抗体開発のためのAbEpicプラットフォームは、他のアプローチに比べて以下の利点があります:

  1. 改善された特異性: 標的に対する特異性を持たないB細胞を除去する選択的パニングを行うことにより、抗体の交差性が顕著に抑えられます。
  2. スケーラブルな生産: このプラットフォームの最終産物であるリコンビナント抗体は、非常に厳密に調節・管理された条件下で大量生産することができるため、高品質な抗体を無制限に供給することを保証します。
  3. 完全な柔軟性: 抗体の重鎖および軽鎖可変領域は、種々の免疫グロブリン発現ベクターにクローニングすることができるため、in vitro診断または治療用途など、さまざまな下流アプリケーションに応用するための柔軟性を有します。

Active Motifと復旦大学の研究者の協力により、COVID-19から回復した患者の血液から得たB細胞の単一細胞解析がAbEpicプラットフォームを利用して実施されました。その結果、抗体の遺伝子がクローニングされ、発現させることに成功しました。

こうして得られた抗体の特徴を調べたところ、これらの抗体はSARS-CoV-2スパイクタンパク質に高い特異性を示し、親和性も高いことが確認されました。また、それらのいくつかの抗体はウイルスのスパイクタンパク質とACE2受容体の結合を阻害しました。さらに、これらのリコンビナントCOVID-19抗体は、スパイクタンパク質で覆われた偽型ウイルスによるin vitro感染アッセイにおいて、強力な中和活性を示しました。このことは、これらの抗体がCOVID-19ウイルスの感染を防ぐ能力があることを示唆します。

これらのヒト型リコンビナントCOVID-19抗体の製造はスケールアップされ、研究用としてグラム単位でご用意することが可能です。

SARS-CoV-2 Clone 414-1 Antibody Data

リコンビナントCOVID-19抗体の特性。リコンビナントヒトCOVID-19抗体の特性を調べるため、いくつかのアッセイを実施しました。ここに示すデータは、1つの代表的なリコンビナント抗体クローンAM001414, Cat. No. 91361のものです。*
A.) リコンビナントヒトCOVID-19抗体とSARS-CoV-2スパイクタンパク質(受容体結合ドメイン, RBD)の結合アッセイ。SARS-CoV-2スパイクタンパク質RBDをコートしたマイクロプレートを図に示した濃度のリコンビナントヒトCOVID-19抗体とインキュベートしました。結合した抗体の検出には、HRP結合抗ヒト抗体を用い、HRPの基質を加えた後に測定した450 nmの吸光度をプロットしました。図に示したEC50値のように、リコンビナントヒトCOVID-19抗体は高いアフィニティーで結合しました。B.) A.)と同様にスパイクタンパク質のRBDをコートしたプレートに、Hisタグ付きACE2タンパク質を加えるとともにリコンビナントCOVID-19抗体の濃度を変えて、ACE2とスパイクタンパク質のRBDとの結合を調べました。その結果、リコンビナントCOIVID-19抗体の濃度依存的にSARS-CoV-2スパイクタンパク質とACE2間の相互作用は阻害されました。スパイクタンパク質のRBDに結合したHisタグ付きACE2の検出には抗Hisタグ-HRP抗体を用いました。IC50値は図に示されています。C.) COVID-19抗体は中和抗体であり、感染を阻害します。ACE2を発現しているA549肺上皮細胞株およびS1スパイクタンパク質で覆われた偽型SARS-CoV-2ウイルスを用いたセルベース感染アッセイにおいて、リコンビナントヒトCOVID-19抗体は強力に感染を阻害しました。そのIC50値は図に示されています。

* アクティブ・モティフのSARS-CoV-2ヒト型リコンビナント抗体の各クローンの開発と特性に関する詳細は以下の論文をご確認ください:Wan J., et. al. (2020) Cell Reports, 32: 107918, July 21, 2020. Human IgG neutralizing monoclonal antibodies block SARS-CoV-2 infection.

私達はCOVID-19の診断・治療法の開発を応援しています!

また、これらのリコンビナント抗体はさらに診断用途や治療用に開発することも可能であり、Active Motifは次のステップへ進むためのパートナー企業または協力者を探しています。私達がどのように協力できるか相談するためにこちらのフォームにご記入の上お問い合わせください(日本語で対応いたします)。

これらの抗体に関するさらなる情報は、下記の表からご覧ください。製品名または”More Info”ボタンをクリックして各抗体に関する実験データや価格などの情報をご確認いただけます。さらなる情報のご希望やバルク品のお見積りはこちらのフォームにご記入の上お問い合わせください(日本語で対応いたします) 。

完全人型リコンビナント抗体

Product Name Cat. No. ELISA Western Blot Neutralization*  
SARS-CoV-2 Spike Antibody (AM009105) 91337     More Info
SARS-CoV-2 Spike Antibody (AM038105) 91339     More Info
SARS-CoV-2 Spike Antibody (AM043105) 91341     More Info
SARS-CoV-2 Spike Antibody (AM004414) 91345   More Info
SARS-CoV-2 Spike Antibody (AM005415) 91347     More Info
SARS-CoV-2 Spike Antibody (AM002414) 91349   More Info
SARS-CoV-2 Spike Antibody (AM006415) 91351     More Info
SARS-CoV-2 Spike Antibody (AM001414) 91361   More Info
SARS-CoV-2 Spike Antibody (AM015553) 91377     More Info
SARS-CoV-2 Spike Antibody (AM002413) 91379     More Info
SARS-CoV-2 Spike Antibody (AM020553) 91381     More Info
SARS-CoV-2 Spike Antibody (AM005505) 91383     More Info
SARS-CoV-2 Spike IgG/IgM Antibody (AM043105) 91385     More Info
SARS-CoV-2 Spike Antibody (AM017553) 91387     More Info

* ウイルス中和アッセイは、ACE2受容体を発現するA549肺上皮細胞株および、SARS-CoV-2 S1スパイク糖タンパク質で偽型化した、ルシフェラーゼレポーター遺伝子をもつ偽型ウイルスを用いて実施しました。

AbFlex®リコンビナント抗体

Product Name Cat. No. ELISA  
AbFlex® SARS-CoV-2 Spike Antibody (AM002414) 91363 / 91364 More Info
AbFlex® SARS-CoV-2 Spike Antibody (AM009105) 91365 / 91366 More Info
AbFlex® SARS-CoV-2 Spike Antibody (AM043105) 91367 / 91368 More Info
AbFlex® SARS-CoV-2 Spike Antibody (AM038105) 91371 / 91372 More Info
AbFlex® SARS-CoV-2 Spike Antibody (AM004414) 91373 / 91374 More Info
AbFlex® SARS-CoV-2 Spike Antibody (AM001414) 91375 / 91376 More Info

サンドイッチELISAにおける抗体の組み合わせ

プレートベースのサンドイッチELISA用として、以下の抗体をキャプチャ用(プレートコーティング用)と検出用にお奨めします。また、検出用に推奨する抗体は未標識のため、ヒトIgG1を検出可能な二次抗体を別途ご用意ください。

Capture Antibody Cat. No.
SARS-CoV-2 Spike Antibody (AM002414) 91349
   
Detection Antibody Cat. No.
SARS-CoV-2 Spike Antibody (AM038105) 91339
Capture Antibody Cat. No.
SARS-CoV-2 Spike Antibody (AM001414) 91361
   
Detection Antibody Cat. No.
SARS-CoV-2 Spike Antibody (AM009105) 91337

その他のSARS-CoV-2関連製品

SARS-CoV-2スパイクS1タンパク質を標的とした抗体に加えて、COVID-19ウイルスを構成する様々な精製リコンビナントタンパク質も販売しています。これらのリコンビナントSARC-CoV-2タンパク質はすでに在庫もあり、1 mgまでご用意しております。バルクサイズのご注文についてはこちらまでお問い合わせください。

Product Name Cat. No. Size  
Recombinant SARS-CoV-2 NSP1 protein 81314 / 81614 50 μg / 1 mg More Info
Recombinant SARS-CoV-2 NSP7 protein 81315 / 81615 50 μg / 1 mg More Info
Recombinant SARS-CoV-2 NSP8 protein 81316 / 81616 50 μg / 1 mg More Info
Recombinant SARS-CoV-2 NSP10 protein 81317 / 81617 50 μg / 1 mg More Info
Recombinant SARS-CoV-2 NSP16 protein 81318 / 81618 50 μg / 1 mg More Info
Recombinant SARS-CoV-2 NSP10 / NSP16 complex 81319 / 81619 50 μg / 1 mg More Info
Rec. SARS-CoV-2 3C-Like Protease (NSP5), His-Tag 81320 / 81620 50 μg / 1 mg More Info
Rec. SARS-CoV-2 3C-Like Protease (NSP5), GST-Tag 81321 / 81621 50 μg / 1 mg More Info

About the author

Kevin Bryant

Kevin Bryant, Ph.D.

Kevin was born in Northern California, in the small town of Eureka, but his studies brought him to the East Coast for about a decade where he came to love Boston sports teams and ended up meeting his wife. Now back home in his native California, he likes to explore the San Diego area with his family and friends. When not working at Active Motif or shopping at Costco, Kevin enjoys trying to become a wine connoisseur and is always searching for a beer he likes better than Pliny the Elder.

Contact Kevin on LinkedIn with any questions, complaints, or compliments – or to get IPA recommendations.


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