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DNA メチル化解析法と選択ガイド

DNA メチル化は、ほぼすべての生物における遺伝子発現とゲノム構築の重要なエピジェネティック制御因子であり、5-mC と 5-hmC をマッピングするための多数の方法が開発されています。ただ解析の選択肢が非常に多いため、どこから始めればよいかわかりにくい場合があります。それぞれの方法に長所と短所がありますが、実験の目的とリソース(サンプル量、時間、費用)に基づいて最適な方法を決定できます。

以下の表は、それぞれの方法の概要と特長を示したものです。

よく用いられるDNA メチル化解析方法

名称 概要 サンプル量 メチル化解析の解像度 カバー率 利点 課題 費用 適したアプリケーション
DNAメチル化のグローバルな定量
Global 5mC/5hmC ELISA 調製したDNAをELISAプレート上に捕捉し、5mC/5hmCなどの抗体を結合させた後に、二次抗体や発色試薬を使ってメチル化DNAを検出する方法 >10‑100 ng Genome ゲノム全体のDNAメチル化の全体量を定量 サンプル数が多いときに、簡単で安価 ゲノム中のどの領域のメチル化が変化したのかは、わからない $ 病気、老化、または喫煙や肥満などの環境要因に関連するDNAメチル化の変化について、サンプルをスクリーニング/モニタリングするのに有用
DNAメチル化の濃縮
MeDIP-Seq or hMeDIP-Seq メチル化DNA認識抗体 (5mC/5hmC) を用いて、断片化したDNAからメチル化したDNAを免疫沈降し、シーケンスを行う方法 >100 ng 100-500 bp ~88% CpG sites CpG領域と非CpG領域の両方を解析可能 MeDIPは、ssDNAを必要とする。酵素を用いる方法に比べてバックグラウンドが高い $$ 病気や環境暴露に関連するメチル化の異なるゲノム領域を決定する費用対効果の高い方法
MBD-Seq タグのついたメチル化CpG結合ドメイン (MBD) タンパク質を用いて、断片化したDNA断片からメチル化されたCpGを捕捉して、配列をシーケンスする方法 >5‑10 ng 100-500 bp Up to 27 million CpGs MeDIPよりもサンプル量が少なくても実施可能。MeDIPよりもCpG領域に対して特異的で感度が高い 非CpG領域のメチル化が検出できない $$ 病気や環境暴露に関連するメチル化の異なるゲノム領域を決定する費用対効果の高い方法
5hmC-Seal beta-Glucosyltransferaseを使用してUDP-Azide-Glucoseドナーから修飾グルコースを選択的に5hmCに転移させ、さらに化学的なラベリング反応により修飾されたグルコシル-5-hmCにビオチンを付加し、ストレプトアビジンビーズにより捕捉し、選択的に5hmCを検出する方法 >10 ng 100-500 bp N/A hMeDIPよりもサンプル量が少なくても実施可能。MeDIPよりもCpG領域に対して特異的で感度が高い。抗体を用いた解析よりも高い特異性かつ高感度に5hmCを検出可能 UDP-Azide-Glucoseを一貫して製造するのが難しい場合がある (Active Motifで販売 #55020) $$ 病気のバイオマーカーとなりうるセルフリーDNAサンプルのヒドロキシメチル化の変化を検出するために一般的に使用されている
一塩基解像度のDNAメチル化解析
WGBS - Whole-Genome Bisulfite Sequencing DNAをバイサルファイト処理してPCR増幅した後、次世代シーケンサーによって解析する方法 >500 ng 1塩基 28 million CpGs メチル化領域と非メチル化領域を包括的にカバーできる 高価で時間がかかる。5mCと5hmCを区別することはできない $$$$ RRBSでは見逃されるような、非 (低密度) CpG領域、また遺伝子間の「遺伝子砂漠」と呼ばれるような領域、または部分的にメチル化されたドメインと遠位の調節要素に関心がある場合に理想的な方法
RRBS - Reduced Representation Bisulfite Sequencing ゲノムDNAを制限酵素 (通常は MspI) を用いて、CpGアイランドおよびプロモーターで一般的な高CG領域のDNAフラグメントを切断、40 ~ 220 bpのフラグメントにアダプターをライゲーションし、バイサルファイト変換してからシーケンスする方法 >200 ng 1塩基 3-5 million CpGs
80-85% CpG Islands
50-60% promoters
density >= 3 CpG/100 bp
WGBSよりも低コスト、1 塩基の解像度でゲノム全体のCpGメチル化高密度領域をシーケンス可能 解析できる領域は、CCGGが豊富な領域に偏っている。CCGGモチーフがないか、まばらな領域の解析には適していない。またWGBSと同様、5mCと5hmCは区別できない $$$ CpG アイランドとプロモーター領域のDNAメチル化プロファイリング
Targeted Bisulfite Sequencing DNAをバイサルファイト処理してPCR増幅した後、特異的プライマーを用いて標的遺伝子座を増幅してライブラリーを調製し、シーケンスする方法 >1‑50 ng 1塩基 Regions of selected amplicons; typically <8. 適切なプライマーが設計できれば、関心のある領域に対して低コストで高度なシーケンス深度が得られる PCRプライマーは、解析したい領域ごとに設計する必要がある。5mCと5hmCを区別できない $$ 解析したい領域が少ない (<8) 場合、特にそれがCpGアイランドでない場合に適している
Bead Array DNAをバイサルファイト処理してPCR増幅し、特定のメチル化部位を標的とするDNAプローブへの結合を使って定量する方法 250 ng 1塩基 850,000 CpGs
>96% CpG islands
簡単、高い再現性。FFPEサンプルでの解析も可能 ヒトとマウスのみ適用。CpG領域の95%は含まれない。また5mCと5hmCも区別できない $$$ CpGアイランドにおける異常なメチル化に関する臨床サンプルのスクリーニング
EM-seq TET2酵素によりアダプターライゲーションされたDNAの5mC/5hmCを選択的に酸化し、次のステップでAPOBEC脱アミノ化から保護することで、非メチル化シトシンのみを変換してPCR増幅し、シーケンスする方法 >10 ng 1塩基 28 million CpGs バイサルファイト変換による分解を防ぎ、WGBSよりもサンプル量が少なくても実施可能 5mCと5hmCは区別できない $$$$ RRBSでは見逃されるような、非(低密度)CpG領域、また遺伝子間の「遺伝子砂漠」と呼ばれるような領域、または部分的にメチル化されたドメインと遠位の調節要素に関心がある場合に理想的な方法。セルフリーDNAやFFPE由来のDNAの解析は、WGBSよりも優れている
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