ATAC-Seq受託サービスの概要

ATAC-Seq (Assay for Transposase Accessible Chromatin Sequencing)は、プロモーターやエンハンサー、インシュレーターなど遺伝子制御エレメントが活性化しているオープンクロマチン領域をゲノムワイドにマッピング可能な解析手法です。
なぜオープンクロマチンの研究をするのか?
- 異なる患者集団のゲノムワイドなオープンクロマチンの特徴付けが可能
- 疾患を引き起こす転写因子および遺伝子制御エレメントの特定
- 治療に対する遺伝子制御反応のメカニズムについての知見を取得可能
- 細胞の分化と発生のさまざまな段階における動的なクロマチン再編成のモデルを開発可能
ATAC-Seqは、遺伝子制御メカニズムに関する予備知識を必要としないため、細胞系や疾患モデルにおけるエピジェネティクスの役割を研究する人々にとって、最初のステップとして最適です。
ATAC-Seqサービスの解析内容:
- 細胞の調製
- トランスポゼース反応
- ライブラリー増幅
- Illuminaプラットフォームのシーケンシング
- バイオインフォマティクス解析
サンプルの種類:
アクティブ・モティフでは、以下のサンプルについてATAC-Seqを実施します。
- ヒト、動物組織(異種移植片やヒト生検サンプルを含む)
- 初代培養細胞(T細胞やB細胞も含む)
- 希少な細胞集団を含むFACS で分離した細胞
お客様の声:
"I am studying the epigenetic regulation of heart failure. I have had a very good experience with Active Motif Epigenetic services and I will continue research with Active Motif in the future. I received good support from both the Sales Department and the Tech Support Team to help me to go through all the aspects of the service."
Ning Feng, MD, PhD
University of Pittsburgh
"ヒト初期培養細胞および不死化細胞株におけるエピジェネティック制御を研究するにあたり、アクティブ・モティフ社のATAC-Seqサービスを利用しました。様々な種類の細胞に対応したサンプル調製法の最適化は困難でしたが、アクティブ・モティフ社スタッフのアドバイスは非常に役立ち、満足できるデータを得ることができました。今後の研究を進める上でもアクティブ・モティフ社の受託サービスは非常に有用と感じています。"
町野 英徳 先生
国立がん研究センター研究所
"ATACシーケンスをお願いいたしました。我々ラボでも初の試みでしたが、丁寧に相談に乗っていただき有望な結果を得ることができました。また、実験結果の解釈、データの取り扱いなども実験終了後も丁寧に相談に乗っていただき、不慣れな領域の中研究がより早く進む助言をいただくことができました。 コロナ禍でのお願いでしたがデータの遅延もなく、標的候補のスクリーニングを行うことができました。本サービスはとても満足のいくものでした。"
推名健太郎 先生
慶應義塾大学医学部 先端医科学研究所 遺伝子制御研究部門
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ATAC-Seqサービスのデータ
図1:アクティブ・モティフのATAC-Seqアッセイは、オープンクロマチン領域を確実に検出する。
オープンクロマチン領域のゲノムワイドなプロファイルの取得には、長年にわたりDNase-Seqが定番として用いられた。青のトレースはその結果を示す。DNase-Seqは、数千万個の細胞を必要とし、技術的にも難しいため、その有用性は限定的であった。緑のトレースが示すはATAC-Seqは、わずか5万細胞からDNase-Seqに匹敵するデータが得られることを示す。
図2:アクティブ・モティフのATAC-Seqは、サンプル群間の異なるオープンクロマチン領域を識別可能。
この例は、4つの異なるサンプルから得られたATAC-Seqデータを示しており、それぞれtriplicateで行われた。異なるオープン領域を黄色でハイライトしている。
図3:ATAC-Seqを用いた主要な転写因子結合部位の同定。
オープンクロマチン領域のDNA配列を解析することにより、最も濃縮されうる転写因子の結合部位を推定できる。この細胞系において最も濃縮された2つの結合モチーフは、B細胞に関連していることも示している。Fra1はB細胞の活性化に伴い速やかに発現上昇することが知られ、PU.1はB細胞の運命決定における重要な制御因子である。
図4:注釈付きプロモーターにおけるATAC-Seqのピークに対するヒストン修飾の分布。
ATAC-Seqのデータと異なるヒストン修飾のChIP-Seqデータセットを比較すると、プロモーターにおけるATAC-SeqのピークはH3K4me3とH3K9Acに最も濃縮されることが明らかになった。
図5:注釈付きプロモーター以外のATAC-Seqピークに対するヒストン修飾の分布。
プロモーター以外のATAC-Seqピークは、エンハンサーマークであるH3K27AcとH3K4me1を含む全ての活性マークにおいて濃縮されている。
図6:組織から取得したATAC-Seqのデータ。
左の図は、マウスの肝臓と肺の凍結組織から作成したATAC-Seqのデータである。 オープンクロマチンプロファイルは、ENCODEコンソーシアムが作成したDNase-Seqプロファイルと類似している。
図7:アクティブ・モティフのATAC-Seqは、高い再現性を示す。
左の実験は、未処理、または3つの異なる条件で処理した細胞株を用い、各条件とも3回ずつ実施した。 相関係数はヒートマップに示されている。 同一条件の結果は少なくとも0.96の係数を持つ。 ヒートマップを見ると、サンプルは予想される通り4つのグループに分かれている。
ATAC-Seqの評価指標
ATAC-Seqデータセットの質を評価する方法はいくつか知られています。その中でも、FRiPスコアとPeak数という指標は最も重要と考えられています。
- FRiPスコア: FRiP (Fraction of Reads in Peaks)スコアは、マッピングされた全リード数に対する、検出されたピーク領域内にマッピングされたリード数の割合のことです。これは、オープン領域の豊富さの尺度となります。また、シグナルがピーク領域にマッピングされ、ノイズはピーク領域の外にマッピングされて読み取られることから、シグナル対ノイズ比(S/N)の尺度とみなすことができます。なお、FRiPスコアは細胞の種類により異なります。 30%を超えるFRiPスコアはアッセイ成功の良い指標ですが、より解析が困難なサンプルにおいては、FRiPスコアが低くても、データに一貫性がある限り許容されます。
- Peak数: ATAC-Seqにおいて同定されたピークの数。『ENCODE』のようなゲノムデータベースコンソーシアムでは、50,000超のピークが検出されることが推奨されています。しかし、これは細胞の種類、組織、および健康状態により異なります。
図8:アクティブ・モティフの最適化されたATAC-Seqプロトコルにより、高いFRiPスコアを実現。
ヒト胚性前駆細胞(4D20.8細胞株および初代細胞)、ヒト初代上皮細胞、ヒト間葉系幹細胞、ラット初代心筋細胞において、3種類のATAC-Seqのプロトコルで解析を行った。オリジナルプロトコル(青)、Omni ATAC-Seqプロトコル(オレンジ)に比べ、アクティブ・モティフのプロトコール(紫)では、いずれの細胞においても、最も高いFRiPスコアが得られた。
図9:アクティブ・モティフの最適化されたATAC-Seqプロトコルにより、高いPeak数を実現。
ヒト胚性前駆細胞(4D20.8細胞株および初代細胞)、ヒト初代上皮細胞、ヒト間葉系幹細胞、ラット初代心筋細胞において、3種類のATAC-Seqのプロトコルで解析を行った。オリジナルプロトコル(青)、Omni ATAC-Seqプロトコル(オレンジ)に比べ、アクティブ・モティフのプロトコール(紫)では、いずれの細胞においても、最も高いPeak数が得られた。
オリジナルATAC-SeqおよびOmni ATAC-Seqに関する参考文献
- Buenrostro, J.D. et al. Transposition of native chromatin for fast and sensitive epigenomic profiling of open chromatin, DNA-binding proteins and nucleosome position, Nature Methods. 2013; 10:1213-1218.
- Corces, M.R. et al. An improved ATAC-seq protocol reduces background and enables interrogation of frozen tissues, Nature Methods. 2017; 14:959-962.
ATAC-Seq受託サービスの使用文献
ATAC-Seqサービスをご利用いただいたお客様の論文データベースを検索できます。
ATAC-Seq受託サービスの資料
Active Motif Epigenetic Services Brochure
Comprehensive ATAC-Seq Solutions Brochure
日本語チラシはこちら。
Sample Submissionポータル
オンラインSample Submissionポータルは、解析したいサンプルの情報をアクティブ・モティフの担当者と共有し、依頼者には解析の進捗をご覧いただけるサイトです。 解析を依頼するために必要な連絡先、サンプルの情報、また解析の内容を記載していただきます。記載方法や、サンプル提出方法についてご不明な点がありましたら「[email protected]」までご連絡ください。
こちらもご参照ください:
Active Motif Epigenetic Services Brochure |
Comprehensive ATAC-Seq Solutions Brochure |
ATAC-Seq Sample Preparation |
Epigenetic Services Citations |
Figure 1: Active Motif’s ATAC-Seq assay reliably detects regions of open chromatin.
DNAse-Seq, which has long been the gold standard for generating genome-wide profiles of open chromatin, is shown in blue. The utility of DNAse-Seq has been limited since it requires tens of millions of cells and is technically challenging. Active Motif’s ATAC-Seq (shown in green), uses only 50,000 cells and provides data that is comparable to DNAse-Seq.
Figure 2: Active Motif’s ATAC-Seq assay distinguishes sample groups by identifying chromatin regions that are differentially open.
The example above shows ATAC-Seq data from 4 different samples, each performed in triplicate. Differentially open regions are highlighted in yellow.
Figure 3: Identifying important transcription factor binding sites using ATAC-Seq
The underlying DNA sequence of differentially open chromatin regions can be analyzed to identify the most enriched transcription factor binding sites. In this cell system the two most enriched binding motifs are also relevant to B cell biology. Fra1 is quickly upregulated upon B cell activation and PU.1 is a key regulator of B cell fate specification.
Figure 4: Distribution of Histone Modifications Relative to ATAC-Seq Peaks at Annotated Promoters
Comparison of ATAC-Seq data to different histone modification ChIP-Seq data sets reveals that ATAC-Seq peaks at promoters are most enriched for H3K4me3 and H3K9Ac.
Figure 5: Distribution of Histone Modifications Relative to ATAC-Seq Peaks Outside of Annotated Promoters
ATAC-Seq peaks outside promoters are enriched for all active marks including the enhancer marks H3K27Ac and H3K4me1.
Figure 6: Active Motif’s ATAC-Seq data generated from tissues
The images above show ATAC-Seq data generated using frozen mouse liver and lung tissue. The open chromatin profiles are similar to DNAse-Seq profiles generated by the ENCODE consortium.
Figure 7: Active Motif’s ATAC-Seq data shows high reproducibility
The experiment above was performed using a cell line that was left untreated or treated under three different conditions and each condition was performed in triplicate. The correlation coefficients are presented in the heat map. Replicates have coefficients of at least 0.96. The heat map shows that the samples cluster into four distinct groups as expected.
ATAC-Seq 評価指標
ATAC-Seqのデータの品質を評価する方法はいくつか知られています。その中でも、FRiPスコアとPeak数という指標は最も重要と考えられています。
- FRiPスコア: FRiP (Fraction of Reads in Peaks)スコアは、得られたピーク領域内にマップされたリード数の、全マップリード数に対する割合のことです。これは、オープン領域の豊富さの尺度であるとともに、シグナルがピークにマップされ、ノイズがピークの外にマップされ読み取られることから、信号対ノイズ(S/N)の尺度とみなすことができます。FRiPのスコアは、細胞の種類によって異なります。 30%を超えるFRiPスコアは成功の良い指標です。しかしながら、この値が低いFRiPスコアであっても、より解析が困難なサンプルにおいては、データに一貫性がある限り許容されます。
- Peak数:ATAC-Seqから同定されたピークの数。ENCODEのようなゲノムデータベースコンソーシアムでは、50,000を超えるピークが識別されることが推奨されています。しかし、これは細胞の種類、組織、および健康状態によって異なります。

Figure 1: アクティブ・モティフの独自なATAC-Seqプロトコルにより、より高いFRiPスコアが得られる.ヒト胚性前駆細胞(4D20.8 cell line and primary cells),、ヒト初代上皮細胞、ヒト間葉系幹細胞、ラット初代心筋細胞において、3種類のATAC-Seqのプロトコルで解析を行った。標準的なプロトコル(■)、Omni ATAC-Seqプロトコル(■)に比べ、アクティブ・モティフのプロトコール(■)では、どの細胞でも最も高いFRiPスコアが得られた。

Figure 2: アクティブ・モティフの独自なATAC-Seqプロトコルにより、より高いPeak数が得られる.ヒト胚性前駆細胞(4D20.8 cell line and primary cells),、ヒト初代上皮細胞、ヒト間葉系幹細胞、ラット初代心筋細胞において、3種類のATAC-Seqのプロトコルで解析を行った。標準的なプロトコル(■)、Omni ATAC-Seqプロトコル(■)に比べ、アクティブ・モティフのプロトコール(■)では、どの細胞でも最も高いPeak数が得られた。
References for ATAC-Seq & Omni ATAC-Seq publications
- Buenrostro, J.D. et al. Transposition of native chromatin for fast and sensitive epigenomic profiling of open chromatin, DNA-binding proteins and nucleosome position, Nature Methods. 2013; 10:1213-1218.
- Corces, M.R. et al. An improved ATAC-seq protocol reduces background and enables interrogation of frozen tissues, Nature Methods. 2017; 14:959-962.