KRAS In-well Lysis ELISA Kitの概要
KRAS In-well Lysis ELISA Kitは、細胞抽出液中の活性型KRASを化学発光検出によりハイスループットに定量することができます。はじめに、活性型RASに結合するGST融合Raf-RBDタンパク質を、96ウェルのグルタチオンコートELISAプレートへ結合させます。次に、KRASタンパク質を含む細胞をそれぞれ細胞培養プレート中で溶解した後、Raf-RBDを結合させたELISAプレートへ加えます。その後、活性型KRASを検出するための特異性の高いヒトKRAS抗体を添加し、HRP標識した二次抗体と反応させて検出液を添加することで高感度な化学発光測定が可能になり、発光量から簡単に活性型KRASを定量きます。
KRAS In-well ELISA Kitの特長
- アイソフォーム特異的 – HRASやNRASと交差反応が少ないKRAS特異的なリコンビナント抗体を使用
- 迅速かつHTPへ対応 – 試薬リザーバーまたは自動マイクロプレートウォッシャーを使用できる試薬設計
- アッセイ必要量 – 1ウェルあたり2×104~16×104個の細胞、または5~50μgの全細胞抽出液でアッセイ可能
KRAS In-well Lysis ELISA Kitの構成品
KRAS In-well Lysis ELISA Kitはドライアイス同梱で出荷されますが、キット内には複数の保管温度を必要とする試薬が含まれています。製品がお手元に届いた際には、すべての試薬が入っているかを確認していただき、下記に示す適切な温度で保管してください。適切に保管された場合は、受領後6ヶ月間安定であることを保証いたします。
Cat No. 52100 | Cat No. 52110 | Storage | |
---|---|---|---|
Reactions | 96 | ||
GST-Raf-RBD | 100 µl | -80°C | |
Positive Control Extract (AsPC-1) | 40 µl | -80°C | |
Recombinant KRAS Antibody | 20 µl | -80°C | |
HRP-conjugated Secondary Antibody | 20 µl | -20°C | |
Protease Inhibitor Cocktail (PIC) | 2 x 101 µl | 1.2 ml | -20°C |
5X Lysis Binding Buffer | 4 ml | 22 ml | 4°C |
10X Wash Buffer AM2 | 29 ml | 4°C | |
1X Antibody Binding Buffer | 14 ml | 4°C | |
Chemiluminescent Reagent | 1.9 ml | 4°C | |
Reaction Buffer | 3.8 ml | 4°C | |
96-well assay plate | 1 ea | 4°C | |
Plate sealer | 4 ea | 4°C |
KRAS In-well Lysis ELISA Kitのデータ

図 1. KRAS In-well Lysis ELISA Kitで使用されるリコンビナントKRAS抗体の、ヒトKRASに対する特異性
ウェスタンブロットにより、Pan-RAS抗体 (ProteinTech, Cat.No.60309-1-Ig) またはKRAS In-well Lysis ELISA Kitで提供されるアクティブ・モティフのリコンビナントKRAS抗体を使用して、リコンビナントヒトHRAS、KRAS、およびNRASアイソフォームに対する反応性を比較した。一次抗体は1 µg/mlの濃度で使用。以下のリコンビナントタンパク質を100 ngずつロードした:ヒトHRAS (2-186, G12V)、ヒトKRAS (2-185, G12C/Q61H)、ヒトNRAS (1-186、WT) (Creative Biomart, Cat#HRAS-228H, Cat#KRAS-457H, Cat#NRAS-447H)


図2. AsPC-1細胞における活性型KRASの定量
A: AsPC-1細胞を96ウェル培養プレートに播種し、1ウェルあたり160,000細胞から培養を開始し、2倍希釈系列で2日間培養した。培地を除去し、1X Complete Lysis Binding Bufferを用いて細胞を溶解し、KRAS In-well Lysis ELISAプロトコルに従い、50μlの細胞抽出液を各ウェルへ添加した。発光測定はCLARIOstarプレートリーダー(ISOGEN Life Science)を用いて定量した。AsPC-1 細胞は、ヒト膵臓癌由来であり、KRAS-G12D 変異体を発現していることが知られている 。
B: AsPC-1細胞をKRAS In-well Lysis ELISAプロトコルに従い溶解し、全細胞抽出液を調製した。Pierce BCA Protein Assay Kitを用いてタンパク質を定量した後、各ウェル50μlにそれぞれの全タンパク質(1.6、3.1、6.3、12.5、25μg)を含むよう1X Lysis Binding Bufferを用いて調製し、活性型KRASについて発光測定を行った。Y軸はRLU (Relative Light Units) を示し、第2軸としてアッセイウインドウ (Signal/Background RLU) を示し、グラフ上部に各数値を示している。

図3. AsPC-1細胞に含まれる活性型KRAS-G12Dに対するMRTX1133阻害剤のIC50測定
3.2 x 105個の AsPC-1 細胞を 96ウェルプレートに播種し、48 時間培養した。その後、細胞を異なる濃度のMRTX1133(選択的KRAS-G12D阻害剤、Cayman Chemical社製)で3時間処理 (N=4) し、 KRAS In-well Lysis ELISA Kitプロトコルに準じて発光測定を実施した。

図4.ヒト腫瘍サンプルにおける活性型KRASの検出
ヒト腫瘍を移植したマウスにおいて、ビークル投与群または20 mg/kgのKRAS G12C阻害剤AMG-510投与群を作製し、それぞれのマウスから採取した組織を瞬間凍結した。5-10 mgの腫瘍組織サンプルをCovaris Cryo Prep systemを使用して粉砕し、200 µlの1X Lysis Binding Bufferを加えた後、腫瘍組織抽出液を15,000 x gで10分間、4℃で遠心を行い、上清についてBCAアッセイからタンパク質濃度を測定した。その後、25 µgの腫瘍組織抽出液を用いてKRAS In-well Lysis ELISAプロトコルに従い活性型KRASの定量を実施した。
KRAS In-well Lysis ELISA KitのFAQ
凍結した細胞を利用できますか?
理想的な結果を求めるのであれば、新鮮なサンプルを用いることをおすすめします。凍結融解を繰り返すことにより、実験の効果を弱くしてしまう可能性があります。もし凍結したサンプルしか得られない場合、細胞溶解液を調製するときに、Complete Lysis Bufferを使うことをおすすめします。細胞抽出液は、分注して-80℃に保管し、凍結融解を避けてください。
KRAS抗体は、KRAS変異体も検出可能ですか?
リコンビナントKRAS抗体は、KRAS In-well Lysis ELISA KitでKRAS G12D変異を持っているAsPC-1細胞株中のKRASの活性を測定できることを確認しています。さらに、リコンビナントKRAS抗体は、KRAS G12C, Q61H変異体に反応することをWestern Blotで確認しています。他の変異については、個別には検証していません。ほとんどのKRAS変異体に使用できることが予想されますが、残念ながら現状では、他の変異体についてはELISAでは検証されていません。
キットでは、何をコントロールとすればよいですか?
KRAS活性測定のポジティブコントロールとして、AsPC-1細胞抽出液が使用できます。キットには、96-wellあたり、4反応分のAsPC-1細胞抽出液が同梱されています。この抽出液は、10 ul/wellで強いシグナル (>10x assay window) を得ることができます。
KRAS In-well Lysis ELISA Kitの資料
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