Nuclear Complex Co-IP Kitの概要
共免疫沈降法 (Co-IP) は、細胞内シグナル伝達や転写調節などの核タンパク質複合体と核内プロセスの関係を研究するために利用されます。しかし、これらの分子間相互作用はしばしば不安定であり、またタンパク質やその修飾は壊れやすいため、従来のDNA結合タンパク質を分離して研究する方法では、複合体の破壊やタンパク質の分解が引き起こされることがありました。アクティブ・モティフのNuclear Complex Co-IP Kitは、穏やかな抽出手順と最適化された免疫沈降試薬によってCo-IPを改善し、無傷の核タンパク質複合体の回収に役立ちます。
Nuclear Complex Co-IP Kit には、抗体に結合するビーズが含まれていないので、研究者自身で用意していただく必要があります。アクティブ・モティフでは簡便かつ効率的に免疫沈降複合体を捕捉するために Protein G Agarose Columns (商品コード 53037/53039) を推奨します。Protein G Agarose Columnsは,非特異的結合を減少するために特別に改変された、洗浄済みプロテインGアガロースビーズが含まれます。このビーズは、抗体結合、洗浄、溶出ステップを簡素化するろ過カラムと一緒に提供され、すぐに使用することができます。
Nuclear Complex Co-IP の特長
- 簡単で容易なプロトコル
- マイルドな抽出方法により、タンパク質間相互作用を壊さずに複合体を回収可能
- 様々な強度のタンパク質間相互作用を最適化できるように、2種の異なるストリンジェンシー免疫沈降試薬を含む

Nuclear Complex Co-IP Kitを使った共免疫沈降のフロー
核抽出液は、酵素的せん断と低塩濃度のバッファーと組み合わせることにより、核タンパク質複合体が維持された状態で調製される。次に、抗体を加えて免疫沈降を行い、塩と界面活性剤の添加により、非特異的なタンパク質を除去する。複合体が乖離しないようにストリンジェンシーの異なるバッファーを用いて洗浄し、タンパク質複合体を回収する。その後、目的の相互作用タンパク質に対する抗体を用いてウェスタンブロッティングを行う。
Nuclear Complex Co-IP Kitの構成品
Nuclear Complex Co-IP Kitは、ドライアイス同梱にて出荷されます。キット到着後は構成品を確認し、それぞれの試薬に適した温度で保管してください。すべての試薬は、受領後適切に保管された場合6ヶ月安定であることを保証いたします。本キットの構成品は以下の通りです。
- Protease Inhibitor Cocktail (PIC); Store at -20°C
- 100 mM PMSF; Store at -20°C
- Enzymatic Shearing Cocktail; Store at -20°C
- 1 M DTT; Store at -20°C
- 10X Hypotonic Buffer; Store at 4°C
- Phosphatase Inhibitors; Store at 4°C
- 10X PBS; Store at 4°C
- 0.5 M EDTA; Store at 4°C
- Digestion Buffer; Store at 4°C
- 5X IP High Buffer; Store at 4°C
- 5X IP Low Buffer; Store at 4°C
- BSA; Store at -20°C
- Detergent; Store at RT
- 5 M NaCl; Store at RT
Nuclear Complex Co-IP KitのFAQ
Nuclear Complex Co-IP Kit (商品コード 54001)とUniveral Magnetic Co-IP Kit (商品コード 54002)の違いは?
主な違い:
Nuclear Complex Co-IP Kit (Cat No. 54001) | Universal Magnetic Co-IP kit (Cat No. 54002) |
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核抽出液 | 核抽出液もしくは細胞抽出液 |
ストリンジェンシーの違うwash bufferを使ってカスタマイズ可能 | 簡単 |
Protein G アガロースカラムを推奨 |
磁気ビーズを利用(キット同梱) |
もしLow Stringency buffer (IP Low Buffer) からHigh (IP High Buffer) に変更する場合、IP BufferとWash Bufferは、両方とも変更する必要がありますか?
Nuclear Complex Co-IP キットは、塩濃度等を柔軟にカスタマイズ可能なキットであり、どのような組み合わせでも使用可能です。IP incubation buffer (Day 1) とIP wash buffer (Day 2) のどちらも同じものを利用しても良いですし、必要に応じて変更することも可能です。
IP Low BufferとIP High Bufferは、界面活性剤と塩濃度の違いだけですか?
5x IP High bufferと5x IP Low bufferは、塩と界面活性剤は同じものを利用していますが、異なる緩衝液系を使用しています (Low bufferはHEPES系、High bufferは、Tris系)。
このキットで調製したサンプルは、質量分析 (MS/LC-MS) で解析できますか?
アクティブ・モティフでは、質量分析での解析を検証していません。しかしながら、多くの文献で使用されています。質量分析装置の中には、バッファーに使用されている物質に対して影響があるかもしれません。お使いの機器のマニュアル、施設における使用不可物質の情報をご確認ください。該当物質が試薬に含まれているか情報提供が可能です。
Nuclear Complex Co-IP Kitの論文使用実績
お客様の投稿した論文実績データベースから、Universal Magnetic Co-IP Kitの使用例が検索可能です。
Nuclear Complex Co-IP Kitの技術資料
こちらもご参照ください
Name | Format | Cat No. | 価格 (税抜) | |
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Nuclear Complex Co-IP Kit | 50 rxns | 54001 | ¥85,000 | Buy |
Protein G Agarose Columns | 30 rxns | 53039 | ¥77,000 | Buy |
5 rxns | 53037 | ¥19,000 | Buy | |
5X IP High Buffer | 25 ml | 37510 | ¥25,000 | Buy |
5X IP Low Buffer | 25 ml | 37511 | ¥25,000 | Buy |
Detergent | 25 ml | 37517 | ¥25,000 | Buy |
共免疫沈降 (Co-IP) はタンパク質相互作用研究において, 大変有用な方法です。まず, 目的タンパク質のうちの一つを認識する抗体で免疫沈降します。この免疫沈降により目的タンパク質に結合する他のタンパク質も共免疫沈降されます。次に, 得られた複合体について, 2つ目の目的タンパク質を認識する抗体を用いてウェスタンブロッティングを行います。従来, 共免疫沈降はDNA結合タンパク質複合体には困難とされてきました。なぜなら, 核抽出物調製の際に核内タンパク質複合体が解離してしまったり, 免疫沈降に使用するバッファー中の塩や界面活性剤が多くの不安定なタンパク質複合体に影響を及ぼすためです。この問題を解決するために, アクティブ•モティフ社では核抽出物の調製や免疫沈降の際に, 核タンパク質複合体のタンパク質間の結合を保持することができる, Nuclear Complex Co-IP Kitを開発しました。
Nuclear Complex Co-IP Kitの使用法
まずPhosphatase Inhibitorを加え, 冷却したPBSを用いて細胞を回収します。回収した細胞をHypotonic Bufferに溶解し, 細胞を膨張させ可溶化します。続いて界面活性剤を加えることにより, 細胞質タンパク質が上清にリークされます。細胞質画分を回収した後, Protease Inhibitor CocktailとPMSFを加えた塩濃度の低いバッファーに溶解し, 核タンパク質を回収します。その後, Enzymatic Shearing Cocktailを加えます。塩濃度の低いバッファーを使用する事で, 核内のタンパク質複合体のタンパク質間結合を保持します。また, DNA断片化によりDNAに結合していたタンパク質複合体がDNAから解離します。
タンパク質複合体回収後, 免疫沈降を行います。本キットには二種類の免疫沈降バッファー, low stringency buffer ( IP Low Buffer )と high stringency buffer ( IP High Buffer )がついています。さらに目的タンパク質複合体のタンパク質間結合が強固な場合には, 界面活性剤と塩を加える事でバックグラウンドを減らす事ができます。ただし, 不安定なタンパク質複合体は, 界面活性剤と塩を加える事で解離する可能性があります。

図1: 共免疫沈降の模式図
Nuclear Complex Co-IP Kit の利点
- 簡便で効率的です。
- 核抽出物の調製の際に, 核タンパク質複合体のタンパク質間の結合を解離させません。
- 免疫沈降に使用する試薬には, バックグラウンドを減らすための界面活性剤と塩がそれぞれついています。
- 複数実験の組立てや, ツーハイブリッドライブラリー作成の必要はありません。
Contents & Storage
Please note that the Nuclear Complex Co-IP Kit is shipped on dry ice and contains reagents with multiple storage temperatures inside. Please store each component at the temperature indicated below. All reagents are guaranteed stable for 6 months from date of receipt when stored properly. Each Nuclear Complex Co-IP Kit supplies sufficient reagents to perform 50 co-immunoprecipitation experiments. This kit includes the following components:
- Protease Inhibitor Cocktail (PIC); Store at -20°C
- 100 mM PMSF; Store at -20°C
- Enzymatic Shearing Cocktail; Store at -20°C
- 1 M DTT; Store at -20°C
- 10X Hypotonic Buffer; Store at 4°C
- Phosphatase Inhibitors; Store at 4°C
- 10X PBS; Store at 4°C
- 0.5 M EDTA; Store at 4°C
- Digestion Buffer; Store at 4°C
- 5X IP High Buffer; Store at 4°C
- 5X IP Low Buffer; Store at 4°C
- BSA; Store at 4°C
- Detergent; Store at RT
- 5 M NaCl; Store at RT
Some select publications are listed below.
- “ALS Associated Mutations in Matrin 3 Alter Protein-Protein Interactions and Impede mRNA Nuclear Export.” by Boehringer et al. (2016) Scientific Reports 7(1):14529.